映画『菊とギロチン』を観ました。

2010年3月10日分から、試験的に書いています。
本家(2009年1月5日〜)は、こちらです。
http://stsimon.seesaa.net/


1923年(大正2年)の関東大震災後を舞台に、実在した「女相撲」とアナキスト
(無政府主義者)の政治結社「ギロチン社」の人々の生き方・人間像を描いた
群像劇です。


中々、面白かったです。
女相撲」と「ギロチン社」の交流は実際には無かったようですが。
女相撲」の人達の切実さ(貧乏、差別、夫の暴力からの脱出)と比べると、
「ギロチン社」の面々は甘過ぎます。
いくら立派な理想を掲げても、資金調達が企業への恐喝、要人襲撃も難しい
となると関係ない弟を襲うとか、余りに幼稚と言うか杜撰です。
当時の状況を現代から評価する困難さはありますが、少なくとも歴史の評価に
耐えられないレベルの行為です。


女相撲」の存在感が流石です。ここが弱いと看板倒れになってしまいます。
ヒロインの花菊ともよ(木竜麻生)は、小柄だし不安でしたが、段々それらしく
見えるようにはなりました。体力よりも技に活路を見い出したのは正解ですね。
女相撲」で圧倒的だったのは、梅の里つね(前原亜希)です。
見た目がいかにも「女相撲」(失礼!)だし、負ける場面は無かったかな。
セリフが少ないのが残念ですが、セリフを多くしたらこの人が主役になって
しまい、全く別の映画になりそうです。
それくらい、凄い存在感でした。


「ギロチン社」のリーダー・中濱鐵(東出昌大)が、チャラい(笑)。


口だけ達者で、やる事は恐喝ぐらい。
その上、東出さんの演技が、どう見ても他の役者さん達と違う(悪い意味で)ので
違和感があります。チャラさの上塗りみたいになってます。
でも、この配役は瀬々敬久監督の狙いだったのかも知れません。
劇中で、古田大次郎(寛一郎)が、中濱に向かって「あんたは何もしない!」と食って
かかる場面があるのです。
監督は、中濱の甘さを強調するために、東出さんの演技を計算していた可能性が
強い(笑)。


後は、私の知ってる役者さんでは、井浦新さん、嶋田久作さんが出ていました。
ちょこっとの出番ですが、場面が引き締まります。
寛一郎さんは、一瞬、三枚堂達也六段に似ていると思いました(笑)。


ところで、日照りで苦しむ地方が「女相撲」を呼ぶのですが、その理由が逆転の
発想で驚きました。
曰く「神聖な土俵に女力士を上げて神を怒らせ雨を降らす」との事です。
女相撲」がイロモノとして見られていたのは確かなようです。


この映画は3時間ちょっとありますが、流石に長過ぎる印象でした。
後半、個々のエピソードに深入りし過ぎな感じで、冗長に感じました。
それでも、刺激的で面白い映画でした。


こういう、間接的に「時代を撃つ」作品は好きです。