ミセス・バッハは作曲したのか?

2010年3月10日分から、試験的に書いています。
本家(2009年1月5日〜)は、こちらです。
http://stsimon.seesaa.net/


数ヶ月前にテレビで、あるドュメンタリーが放送されました。
「ミセス・バッハ〜バロックの名曲は夫人によって書かれた〜」というもので、2番目の
奥さんであるアンナ・マクダレーナがバッハの曲の一部を作曲していたのでは?という
中々刺激的な内容です。


このドュメンタリーは、ニューヨーク・フェスティバル芸術部門金賞受賞作との事です。
大きなテーマは、「無伴奏チェロ組曲」の作曲はアンナ・マクダレーナだったという仮説
です。
チェンバロ曲の一部がアンナ・マクダレーナの作曲である可能性は、直接的な証拠は無い
けど確かにありそうです。筆跡鑑定の話は説得力があって面白いです。
ただ、途中から「アンナ・マクダレーナが女性だから黙殺されている」という主張が強過ぎ
て辟易します。


本題の「無伴奏チェロ組曲」に関しては、説得力が無いです。
主な根拠として
①「無伴奏チェロ組曲」のバッハ自筆譜が見つかっていない。
②筆圧からスラスラ書いているが、それはアンナ・マクダレーナが自作曲を写したから。
③アンナ・マクダレーナは歌手で高度な音楽教育を受けていた。
④バッハ家の友人が「ミセス・バッハによって書かれた」と記述している。
を挙げています。
①〜③については
彼女が筆写した「無伴奏チェロ組曲」には、演奏不可能な部分がいくつもあります。
自分にチェロの知識があって作曲したら、そんな事は起こり得ないでしょう。
アンナ・マクダレーナは、弦楽器に関しては素人だったと思われます。
普通に考えれば、筆写した時に間違えたと考えるのが自然です。
④は、根拠とする「エクレール」という言葉が当時は「書く」という意味だけで、「作曲」と
いう意味は無かった点で根拠としては弱い。


それでも、アンナ・マクダレーナが、バッハの作曲にかなり関与していた節があります。
当時の作曲は、今考えるほどには個人の著作物の概念は薄いようです。
やっぱり、「無伴奏チェロ組曲」に関しては直接証拠が無いです。
バッハの自筆譜が見つかれば解決なんですが(笑)。


「アンナ・マクダレーナが女性だから差別されている」という話以外は面白かったです。