ディック・フランシス

競馬を舞台にした推理小説で知られる英国の作家ディック・フランシス氏
が2010年2月14日に死去しました。89歳でした。


元騎手で、引退後に作家としてデビューして成功を収めました。
騎手時代は、エリザベス女王のお抱え騎手として活躍したんですよ。
でも、有名なのは勝ったレースではありません。
英国最高の障害レース、つまり世界最高の障害レースであるグランドナショ
ナルで事件は起こりました。
エリザベス女王の所有していたデヴォンロック号に騎乗していたのですが、
先頭で走っていたのにゴール直前馬が座り込んでしまい、勝ちを逃した事件
です。


みどりのマキバオー」と違って馬は言葉を喋れないので、真相は不明なの
ですが、私の好きな仮説はこうです。
過酷なレースで疲労困憊していたデヴォンロック号は、存在しない幻の障害
を見てジャンプに失敗して、座り込んでしまったというものです。
「観客が投げる帽子を見て、気が動転した」よりはロマンがあります(笑)。


さて、作家に転向したフランシスは次々と傑作を発表します。
読み始めたのは、大分後になってからですが、随分と熱中しましたよ。
1年に1作発表されるのですが、とても待ち遠しかったものです。
日本語訳は全部漢字2文字のタイトルで、それも印象的でした。
「本命」「度胸」「興奮」「利腕」「罰金」「侵入」「敵手」「帰還」「再起」など。


最初は、騎手とか元騎手などの競馬関係者が主役だったのですが、段々と
競馬は間接的にしか登場しなくなります。
それでも、「競馬ミステリー」と言われ続けました。


主人公は、常にストイックで自分の仕事を誠実にこなします。
自分自身に対する評価は厳しいのですが、周囲の評価は本人が思っている
以上に高いのです。
私は大抵の会社員がそうであるように、自分の仕事に対する周囲の評価が
低い事に悩んでいました。
まるで、その対極にあるようなフランシス作品の主人公は、私にとって逆説
的に理想の存在であった事は確かです。
戸松遥さんのメインの仕事である声優業において、戸松さんは自分自身の
評価をどのように考えているのでしょうか。
とても興味があります。


フランシス作品では初期の「度胸」が好きです。
才能ある若手騎手が、段々認められていく話です。
当時の私の気分にピッタリでしたね。


戸松さんに、東京競馬場のレースを見てもらいたいなぁ。感動しますよ。