ヘルムート・ヴィンシャーマンの「マタイ受難曲」(日本語訳)

2010年3月10日分から、試験的に書いています。
本家(2009年1月5日〜)は、こちらです。
http://stsimon.paslog.jp/


このコンサートに行って来ました。
9月30日に、すみだトリフォニーホールという場所でした。
戸松遥さんとかスフィアは、多分行かないコンサートだと思います。
最近、この言い方が好きだな(笑)。


ネットでの案内は
〜J. S.バッハの権威 マエストロ ヴィンシャーマンの90歳を祝して〜
レコード時代から有名な人で、ドイツ・バッハゾリステンという管弦楽団
を率いています。今年で何と結成50周年だそうです。今回は違うオケ。
一時代を築いた人ですが、現代楽器による演奏なので「もう古い」と言うの
が一般的なのかな。今は古楽器(ビリオド楽器)による演奏が多いですから
ね。特にバロック音楽は。
これには大いに文句があるのですが、それはまた別の機会で(笑)。


この人の「ブランデンブルク協奏曲」のCDは持ってます。
実に明快で、テンポが素晴らしいのです。絶品です。
フランスやイタリアとは違う明るさがあります。歯切れが良くて重くなら
ないのですがある種の規則正さみたいな物も感じます。
今回のパンフレットにヴィンシャーマンのモットーとして「明晰に、生き
生きと、喜ばしく」とありました。
そうそう、正にその通りの演奏なんですよ。


今回も普通の「マタイ受難曲」ならば行かないのですが、日本語でやると
言うので興味がありました。
大体、ドイツ語のために作曲された曲が日本語に乗るのかという興味です。
ヴィンシャーマンは「どんな楽器や言葉でやってもバツハはバッハ」とか
言っているようです。それは正しいと思いますよ。


結論から言えば非常に面白かったです。
話を進行する福音史家(テノール)役の人が急病で、他のテノールが代役を
務めていました。
なので、間に合わなくて福音史家の部分だけはドイツ語でした。
同じ人(ちょっと松尾貴史に似てる)がドイツ語と日本語で歌うという一生
見れないシーンでした。
このホールは、1階の客席両側にモノリスみたいな電光掲示板があって日本
語が表示されてました。これはいいですね、文明の利器。
日本語で歌っていても、聴き取れない部分がありますから助かります。


日本語は文語調なので、曲の雰囲気に合っています。
「我らの主イエス、かくもむごく裁かるるいわれはありや?」みたいな言葉
でした。ちょっと苦しいかなと思う部分もありましたが、逆にピタッと
ハマる部分もあるんですよ、これが。


一番印象的なのは、キビキビと指揮をするヴィンシャーマンです。
90歳というのが全然感じられない。どうみても70歳ぐらい(笑)。
テンポが実に小気味いいんですよ。曲の性格からはもっと重々しくしても
いいのに軽快に飛ばします。それでも崩れないのがバッハですけど。
オーケストラは40人程度です。合唱の人数はは多いのですが、非常にまと
まっていて柔らかい声です。オケも芯のある音ですが刺激的ではないです。
ソロではテノールとアルトが良かったかな。
本当に「明晰に、生き生きと、喜ばしく」でした。


全曲で約3時間の大曲です。聴いている方の集中力の方が問題です。
最後の荘重な曲が終わってすぐ拍手する客が何人かいました。
余韻を重視するヴィンシャーマンは、それを後姿のまま両手を広げて制止
しました。
少しの間そのポーズで、それから拍手を解禁。カッコイイじゃないか。
1部と2部の間に休憩が20分あったけど、ヴィンシャーマンだけは立ったまま
で指揮ですから凄いスタミナ、集中力です。


ヘルムート・ヴィンシャーマン、恐るべし。また聴きたいです。