「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」に行きました。

会期終了近くになって、やっと行って来ました(笑)。
プーシキン美術館は、モスクワにあり収蔵点数約10万点の大美術館です。
ロシアの美術館というと、世界最大のエルミタージュ美術館を思い浮かべるけれど
プーシキン美術館も凄いものです。
そこから厳選された66点が来日しました。
目玉は、チケットにも印刷されているルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」です。
夢見るような優しい表情が魅力的ですが、実際の人物とは大分違うらしいです(笑)。


やっぱり、印象派以後の画家の個性が滲み出た絵画を知ると、古典主義とかロココの時代
は、形式主義的でやや退屈に感じてしまいます。なので、このあたりは流し見です。
何故かゴッホの作品の前に立つと鳥肌が立ちます。今回もそうでした。もう条件反射です。
「医師レーの肖像」は、ゴッホが治療してくれた医師へのお礼として描きました。
しかし、贈られた医者は、全く気に入らず、長年ニワトリ小屋の穴ふさぎに使われた挙句、
売り払われてしまいました。酷い話ですが、ゴッホの人生を暗示しています。
ロートレックの「窓辺の女」には、女性の横顔にその人の人生さえ見えます。
何という洞察力でしょうか。
ピカソの変幻自在の作風には、目まいを覚えます。何でそんなに変えられるのか不思議。
印象的だったのが、マルク・シャガールの「ノクターン」。
亡き妻への愛と哀しみが幻想的な画面から溢れています。
馬の「赤」の深さに、しばらく見とれてしまいました。


さて、個人的なお目当てはアンリ・ルソーの「詩人に霊感を与えるミューズ」。
実は2点あって、これは最初の「カーネーションと間違えて別の花を描いた方」です。
ルソーの友人で詩人・アポリネールとその恋人、詩人・画家のマリー・ローランサンを描い
たものです。

パッと観るとアポリネールの手が大き過ぎます。
ルソーは、アポリネールの身体を細かく計測して描いたそうですが(笑)。
「それでコレかよ!」と誰もがツッコむと思います。
ローランサンに至っては、山田五郎が言ってたけど本当に「マツコ・デラックス」です。
ローランサンは美貌で有名で、彼女の描いた絵からは儚げな美人を連想させます。
ローランサンは身体計測を拒否したそうですが、こうなる事を予想していたのか。
あるいは、人の良い素朴な画家を装っていたルソーの意趣返しなのか(笑)。
まぁ、ルソーは友人達のために一生懸命に描いたと思います。
他の絵でも、自分が重要と思った物を大きく描いてしまう「主観的遠近法」を多用しています
からね。ローランサンの事を大好きだったのでしょう。「ミューズ(女神)」とまで言ってるし。
アンデパンダン展(審査無しの自由出品の美術展)に出品していたルソー。
彼の作品は、民衆の「愛すべき嘲笑」の的になっていたようです。
出品されていないと、民衆は「ルソーの作品を出せ!」と押しかけたそうです。
今回、その民衆の気持ちが少し理解出来ました(笑)。
木々の深い緑が、いかにもルソーの世界です。


ゴッホの新作が発見されたそうで驚きです。実際に観たいものです。