高垣彩陽さん出演の舞台『Cash on Delivery』初日を観ました(2017-11-29)

会場 博品館劇場 18:30開場 19:00開演


ラフィングライブの第3回公演『Cash on Delivery』の初日を観劇しました。
去年の第2回公演「Run for Your Wife」の作者は英国のレイ・クーニーで今回の作者は
その息子のマイケル・クーニー。
親子だからという訳でもないでしょうが、この二つの作品はテイストが驚くほど似て
います。
主人公が嘘に嘘を重ねて、周囲が翻弄されるという構図が全く同じです。
メインのキャストも去年と同じで、役柄も似ているので物凄い既視感がありました。
これは演劇としては、良い事なんでしょうか・・・。
去年もあんまり笑えなかったけど、今年もあんまり笑えませんでした(笑)。
去年は重婚で、今回は公金詐欺なので、犯罪度も今回の方が高いです。
申請書類まで沢山偽造しているし、やってる事はすごく悪質です。


役者さんは、流石に達者揃いです。特に岩崎さんのとぼけた演技は好きです。
場面場面では面白いのですが、結局犯罪を誤魔化すためなのが何とも。
山寺さんが絡まない場面の方が笑えました。
その理由を考えると、山寺さんがある意味上手すぎるからだと思いました。
ヘラヘラと軽妙で、スムースに出る嘘。これが本当に上手い。
それ故に、反省して止めたいという感じより、ただの詐欺師に見えてしまいます。
余計にタチが悪い感じなのです。


山寺さんの役を、例えばローワン・アトキンソンが演じるとしたら、きっと1ミリも
笑わないだろうし、嘘の付き方も苦しまぎれ感、切実さをもっと出すのではなどと
考えてしまいました。そうしないと通奏低音である「公金詐欺という大きな犯罪」に拮抗
出来ないと思います。
ところで、ラストのオチはあまりに安易で酷かったです。犯罪はチャラかよ(笑)。
逆に言えば、ラストのオチが成立するためには、そこに到達するまでの役者(特に
山寺さん)の演技に説得力が無いとダメではないかと思います。
今回、残念ながら私にはそれが感じられませんでした。


「Run for Your Wife」ではLGBTの扱いに作者の考えが伺えました。
今回は、明らかに当時の英国の「ゆりかごから墓場まで」と言われた高社会福祉政策
への揶揄を感じました。
劇中でも「(働かないで)年間27000ポンド貰ってる」「(働いている)俺の2倍だ!」と
いうセリフもありました。
やっぱり、只のドタバタコメディではありません。
英国喜劇らしい底意地の悪さがあります。
そこを脚本、演出、役者さんがどの程度理解しているのかな、という印象はあります。
いや、もちろん観客もですが。


さて、本題のあやひーの演技です(笑)。
最初は静かで、段々ヒステリックになっていきます。狂気一歩手前の凄い迫力でした。
表情の演技の幅広さも本当に素晴らしかったです。
特にどんな声の大きさ、勢いの時でも発音が綺麗で聞きとりやすいのです。
そういうテクニックは役者の基本だと思いますが、抜群に上手いと思います。


余談ですが、私は今第九の合唱を練習しています。
先生によく言われるのが「ppでもffでも、響きを通すように」という事です。
声の小さい部分でも観客に聴こえるためには、口の中を広げて声を響かせる事が大事
という訳です。
あやひーは、音大出身で「一番好きだったのは合唱」と語っているので、きっと声を
響かせる技術も完璧に身に付いているのだと思います。
その技術だけでも、舞台役者としての大きな武器・財産だと思います。


次回は千穐楽を観劇予定です。席も後ろなので双眼鏡必須です(笑)。