高垣彩陽さん出演の舞台『Cash on Delivery』千穐楽を観ました(2017-12-03)

会場 博品館劇場 17:00開場 17:30開演


千穐楽は後ろの席だったので、双眼鏡で役者さんの表情を観ていました。
表情も含めての演劇ですからね。
お芝居への全体的な感想は、前回とほとんど同じです。


2回目だから分かった点とか、改めて思った事などを挙げておきます。
○リンダ(あやひー)が最初に家を出る時に、ドアの上の戸棚をチラッと見るシーン。
 ちょっと眉をひそめるという細かい演技。スフィアクラブを思い出しました。
 これはもちろん、夫の女装道具を気にしている訳ですが、1回目は気付かないよね。


○ジェンキンズ(岩崎ひろし)が、実際に飲み食いしながらのお芝居は大変そうでした。
 最初登場した雰囲気は、社会保障省の優秀な調査員でしたが、これが見かけ倒しも
 いいところ(笑)。
 特にノーマン(水島裕)のニセ聴覚障害を見抜けないのは調査員として如何なものか。
 大体、ミズ・クーパー(斉藤こず恵)は不正受給を疑って派遣しているのだから、
 もっと 疑うのが自然な流れです。
 いや、これは原作が悪いとも言えますが。
 ただ、岩崎さんのとぼけた演技は、いい緩衝材になってます。


○ジョージ叔父さん(横島亘)いくらなんでも気絶し過ぎです。
○ノーマン(水島裕)の演技が一番ナチュラルな印象でした。ほとんど素みたいな感じ
 で、つまりメチャメチャ上手いと思います。
○エリック(山寺宏一)は達者な演技というか熱演です。ただ役柄的にはもっと切実な
 感じが欲しかったです。表情はそういうところもあるのですが(特に前半)、全体に
 ヘラヘラした印象が強すぎました。


○チェシントン(折笠富美子)は、役柄の雰囲気が非常によく出ていたと思います。
 リンダとの言い争いは、中々の迫力でした。
 声優の折笠さん、舞台をやっていたとは知りませんでした。
○フォーブライト(高橋広樹)見た目も演技も硬質な感じ。むしろ、お役人を演じたら
 ピッタリなのですが、この人が調査員だとエリックの嘘も一瞬でバレそうです。


○チャップマン(小形満)カウンセラーですが、早トチリでお人好しの感じが貴重な存在。
○ブレンダ(越川詩織)ノーマンの婚約者。ラストだけの出番ですが、存在感がありました。
○ミズ・クーパー(斉藤こず恵)は見た目のインパクトがあり過ぎます。ズルいよ(笑)。
 昔は人気子役だった方だと思います。


去年も思ったのが、外国の古い現代劇を演じる難しさ(役者も観客も)です。
例えばリンダが夫の女装趣味(誤解ですが)をカウンセラーに相談するという件。
あれは今の日本では、ちょっと大げさに思えます。
でも、当時の人には大ごとだったんでしょう。それ故、リンダ夫人の誤解を安心して
笑えたのだと思います。
私は誤解内容より、あやひーのオーバーな演技(表情も含めて)を楽しみました。


作者は根底に、当時の英国の過剰な福祉政策への皮肉がある訳で、その思いを共有する
観客がいるから、エリックのジタバタぶりが笑えるのです。
でも、今の日本ではそういう背景がスッポリ抜け落ちています。逆に福祉は貧困だし。
場面場面では、コント的に笑えても、最後の犯罪チャラの部分の後味はよくないです。
当時の役者(特にエリック役)は、どうやってあのラストまで演技したのか気になります。


ところで、LGBTに理解のあるあやひーが去年も今年も保守的な道徳観の人妻を熱演して
いて、それは意図的な配役・・・である筈も無いのですが、別の意味で楽しかったです。


来年も、あやひーが出演するなら観たいですが、別の作者の作品を希望します(笑)。