藤井聡太四段のC級2組2回戦。

2010年3月10日分から、試験的に書いています。
本家(2009年1月5日〜)は、こちらです。
http://stsimon.seesaa.net/


7/6に行われた順位戦藤井聡太四段のC級2組2回戦が素晴らしい一局でした。
藤井四段としては、公式戦初敗戦後の対局だけに、注目もされるし重要な順位戦
なので気合いも入るでしょう。


相手の中田功七段(49)は、お家芸の「コーヤン流三間飛車」という作戦でした。
藤井四段は、居飛車穴熊で堅い守りです。
しかし、「コーヤン流三間飛車」というのは、対居飛車穴熊用の作戦なのです。
特に、長年の経験からの端攻めは職人芸的な破壊力があります。
中盤までは、中田七段が巧妙に指して、藤井四段は苦しい戦いになりました。
藤井四段の居飛車穴熊、そして対振り飛車、特に「コーヤン流三間飛車」とは初の
対戦です。やはり、序盤・中盤が経験不足なのは否めません。


穴熊は堅い守りですが、王様が端っこの隅にいるので逃げ場所がありません。
あと一歩で負けという局面が続きました。
藤井四段は、「打ち歩詰め」の局面を作り、ギリギリの防戦です。
「打ち歩詰め」というのは、最後に手持ちの歩を使って相手の王様を詰める方法で
将棋では禁止(やれば反則負け)なのです。


盤面の歩を進めて王手・詰みは反則ではありません。
藤井四段は、自分の王様の一つ上の升だけ空けて、「打ち歩詰め」の局面を作りました。
相手に、飛車、香車、金、銀のいずれかの駒を渡せばアウトの状況でした。
それが結構長く続くという、アクロバットみたいな防御。
しかも、その時点では相手の王様は金銀4枚でガッチリ固められて鉄壁の守りです。
相手の攻撃を防いでも、反撃の手段も乏しいという場面なのです。
精神的にも、とても苦しいと思います。
そこで心が折れないのが凄いところです。


相手の攻撃を防いでからの反撃の一手も不思議なものでした。
「これで間に合うのか」という感じの一見緩い手ですが、間に合ったので多分最善手
でした。むしろ、自分の猛攻で詰まなかった中田七段の心が折れたようです。
何回も溜息を発していましたから(笑)。
それにしても、あれは14歳の指し回しじゃなかったです。
大山十五世名人みたいな粘りでした。


次回の順位戦、やはり2連勝の若手の強豪・高見泰地(たかみたいち)五段戦も楽しみ。