「将棋世界」2018年7月号②

2010年3月10日分から、試験的に書いています。
本家(2009年1月5日〜)は、こちらです。
http://stsimon.seesaa.net/


人気連載企画の一つに「イメージと読みの将棋観」というのがあります。
これは、実際の対局の途中図を示して、トップ棋士や若手で活躍中の棋士に見解を
聞くというものです。
棋士の読みの精度や将棋観が見えて、とても面白いのです。


以前、郷田真隆九段が、ある局面の最善手順を完全に的中させて驚きました。
そういう事は、ほとんど無いからです。
実際の対局者が必死で読んだのと、問題として出された時では集中度が違います。
当然、対局者の方が深く読んでいる筈です。それを完全的中ですからね。
羽生世代のA級棋士の底力を見た思いです。
若手棋士は、読みが浅いというか、見切りが早い気がします。


今回のテーマ図の一つが「矢倉の序盤に革新が起きた」です。
「矢倉」というのは「将棋の純文学」とも言われる、手数をかけた堂々とした駒組
です。40歳より上の棋士は、これをメインに勉強したらしいです。
ところが最近は、あまり指されなくなりつつあります。
先手が矢倉を目指しても、後手は急戦策で速攻を仕掛けるので、先手が苦戦する
パターンになってます。矢倉までの手数がかかり過ぎるのです。


そこで現れたのが、序盤で今まで▲6七金右としたのを▲6七金左▲7八玉(後手なら
△4三金左△3ニ玉)と手数を短くして、囲いも簡略化しています。
この形だと、角交換した時に自陣に隙が無いという主張です。
この形への賛否を棋士達に聞いています。


郷田真隆九段(47)
「形によっては▲6七金左が生きる場合もある。でも、この局面では理由がない」
屋敷伸之九段(46)
「後手の急戦狙いに対応できるなら、ここで▲6七金左もあると思います」
木村一基九段(44)
「自分は意外に有力だと思います。それなりに柔軟に対応している」
糸谷哲郎八段(29)
「うーん、先手としてさえた戦法だとは思えないですね」
郄見泰地叡王(24)
「これは私の実戦です。この手は今後も指されるのではないかと思ってます」
藤井聡太七段(15)
「▲6七金左から▲2九飛まで進めば、バランスを生かす先手の主張はあるかなと」
増田康宏六段(20)
「自分ではやる気がしない。わざわざ先手でやる作戦ではないと思う」


見事にバラバラな見解です。しかも、世代によってもバラバラで面白いです。
それだけ、革新的なアイデアだと思います。
ところがですよ、奥さん!
この号の前月号から、千田翔太六段(24)の「潮流(トレンド)が生まれるとき」という
連載が始まりました。
その中で既に、後手に△4三金左とさせない指し方を研究しています。
変化が速すぎて、ついて行けません(笑)。


何だか4Kテレビも普及していないのに、8K12Kの話が出ているのと似てますね(笑)。